身体のしくみ|肩こりと肩関節は同じ場所の話?
「肩がこったなあ」
そんなとき、私たちは自然と「肩が悪いのかな?」と考えます。
でも、ここで少し身体のしくみを見てみると、意外なことが分かります。
一般的にイメージする「肩関節」と、普段感じている「肩こり」は、必ずしも同じ場所の話ではありません。
今回は、「肩」という場所がどんな構造になっているのか、そして肩がこるとき身体ではどんなことが起きているのかを、少し広い視点から見てみます。
そもそも「肩関節」ってどこ?
「肩関節」と聞くと、多くの方は腕の付け根あたりをイメージすると思います。
解剖学的には、上腕骨の先端にある上腕骨頭と、肩甲骨にある関節窩がつくる「肩甲上腕関節」が、いわゆる狭い意味での肩関節です。
この肩関節は、単純に骨と骨が接しているだけではありません。
周囲には、
- 関節軟骨
- 関節唇
- 関節包
- 滑膜
- 靱帯
などの組織があります。
さらに肩関節の周囲には、腱板(ローテーターカフ)と呼ばれる筋肉・腱の集まりがあります。
腱板を構成しているのは、
- 棘上筋
- 棘下筋
- 小円筋
- 肩甲下筋
の4つです。
これらは腕を動かすだけでなく、上腕骨頭を関節の中で安定させながら動かすうえでも重要な役割を持っています。
ほかにも、上腕二頭筋長頭腱や滑液包など、多くの組織が肩の動きに関わっています。
つまり、普段何気なく使っている「肩関節」だけを見ても、実はかなり複雑な構造をしています。
でも、腕は肩関節だけでは動きません
さらに面白いのはここからです。
腕を上げるとき、肩甲上腕関節だけが動いているわけではありません。
肩周囲をもう少し広く見ると、
- 肩甲上腕関節
- 肩鎖関節
- 胸鎖関節
- 肩甲骨と胸郭の間で起こる動き
などが連動しています。
肩甲骨は胸郭の上を滑るように動き、鎖骨も一緒に動きます。
さらに、その土台となっている胸椎や胸郭、肋骨、頸部の状態も、肩甲骨や腕の動きに関係します。
つまり、
「腕を上げる」という一つの動きでも、実際には身体のいろいろな場所が協力しています。
肩は、単独で動く関節というより、いくつもの関節や身体部位が協調して働く「肩複合体」として考える方が分かりやすい場所です。
では、「肩こり」の肩はどこなのでしょう?
ここで今回の本題です。
肩甲上腕関節そのものにも、もちろんさまざまな問題が起こります。
打撲や脱臼などの外傷もありますし、腱板周囲のトラブルや、いわゆる凍結肩など、外傷とは関係なく起こるものもあります。
しかし、私たちが日常生活で、
「肩が重い」
「肩が張っている」
「肩がこる」
「首から肩が疲れる」
と感じているとき、その感覚が必ずしも肩甲上腕関節そのものから生じているとは限りません。
むしろ、「肩こり」と呼ばれている場所を見てみると、首から肩甲骨周囲の筋肉が関係していることが多くあります。
肩甲骨のまわりでは、たくさんの筋肉が働いています
肩甲骨の周囲には、たくさんの筋肉があります。
代表的なものには、
- 僧帽筋
- 肩甲挙筋
- 菱形筋群
- 広背筋
などがあります。
ほかにも、肩甲骨を動かしたり、安定させたりする筋肉が数多く存在します。
例えばデスクワーク。
パソコンに向かって長時間同じ姿勢を続けていると、身体はほとんど動いていないように見えます。
しかし、筋肉が何もしていないわけではありません。
頭や腕、肩甲骨などが大きく崩れないように、周囲の筋肉は一定の位置を保つために働き続けています。
大きな運動をしていなくても、同じ状態を長時間支え続ければ、筋肉には負担がかかります。
例えば、肩甲挙筋や僧帽筋上部などでは首から肩の上あたり。
菱形筋群などでは肩甲骨の内側あたり。
こうした場所に、
「重い」
「張る」
「疲れる」
「こる」
といった感覚を感じることがあります。
もちろん、
「肩こりの原因は肩甲挙筋です」
というように、一つの筋肉だけで説明できるわけではありません。
肩甲骨の周囲では多くの筋肉がそれぞれの役割を持って働いています。
その中で、どこかが頑張りすぎている状態が続いていることもある、というイメージです。
肩甲骨だけを見ても十分ではありません
では、肩甲骨周囲の筋肉だけをほぐせばいいのでしょうか。
身体はそれほど単純でもありません。
肩甲骨は、胸郭の上を動いています。
つまり肩甲骨の動きを考えるなら、その土台となっている胸郭や胸椎の動きも一緒に考える必要があります。
長時間座っている。
同じ姿勢が続いている。
胸椎をあまり動かさない生活をしている。
いわゆる猫背や巻き肩のように見える姿勢になっている。
こうした状態では、肩甲骨や首周囲の筋肉の使われ方が変わることがあります。
ただし、
「猫背だから肩こりになる」
と単純に考えるのも少し違います。
姿勢はあくまで一つの要素です。
同じような姿勢でも肩がこらない人もいれば、肩こりを感じる人もいます。
だからこそ、一つの原因だけを探すのではなく、身体全体の使われ方を見ることが大切になってきます。
呼吸も、肩と無関係ではありません
さらに視野を広げると、「呼吸」も肩周囲と無関係ではありません。
呼吸では横隔膜が大きな役割を持っていますが、それだけで呼吸しているわけではありません。
状況によっては、首周囲の筋肉なども呼吸を助けるために働きます。
胸郭の動きが少なかったり、呼吸が浅くなったり、首周囲の筋肉を多く使う状態が続いたりすると、首や肩周囲の筋肉の働き方にも影響する可能性があります。
ここでも、
「横隔膜が動かないから肩こりになる」
という単純な話ではありません。
呼吸や胸郭の動きも、肩周囲の筋肉がどのように働いているのかを考えるときの、ひとつの要素として見ることができます。
「肩がこる=肩関節が悪い」ではありません
ここまで身体を少し広く見てみると、「肩」という言葉のイメージも少し変わってきます。
一般的に肩関節としてイメージされるのは、上腕骨と肩甲骨でつくられる肩甲上腕関節です。
しかし、私たちが普段「肩がこる」と感じている場所では、
肩甲骨、鎖骨、首、胸郭、そしてその周囲にあるさまざまな筋肉が関わっています。
ですから、
「肩がこる=肩関節そのものが悪い」
とは限りません。
身体を見るときには、こっている場所だけを見るのではなく、
「どこが動いているのか」
「どこが動きにくくなっているのか」
「どこが頑張りすぎているのか」
と、少し視野を広げてみると身体の見え方が変わってきます。
身体は、いろいろな場所がつながって動いています
肩に限らず、身体は一つの関節や一つの筋肉だけで動いているわけではありません。
一見すると関係のなさそうな場所も、動きの中では互いに影響し合っています。
「肩がこったから肩だけを見る」のではなく、
その周囲では身体がどんなふうに動いているのだろう?
そんなふうに身体を見るきっかけになればと思います。
整体ジムりらっくでは、
「身体を整え、動きを覚える場所」
という考え方を大切にしています。
身体のしくみを少し知ることも、自分の身体を知るための一つのきっかけです。
※肩の強い痛み、急な腫れ、外傷後の痛み、腕が上がらない、しびれや筋力低下などがある場合は、「肩こり」と自己判断せず、必要に応じて医療機関への相談をご検討ください。



